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「NO!監視」ニュース 【第7号】 2004-05-24

■「監視カメラの規制は可能か――杉並区条例案にみる監視カメラ規制のゆくえ」
――04年3月11日学習会報告

 3月11日、「監視カメラの規制は可能か」と題して、プライバシー・インターナショナル・ジャパン代表・白鴎大学教授の石村耕治さんを講師に招いて学習会を開催しました。
 3月18日の杉並区議会において「杉並区防犯カメラの設置および利用に関する条例案」が可決・成立し、同条例が7月1日から施行となります。石村さんは「杉並区監視カメラ専門家会議」の委員として、この条例案の原案となった「答申」の作成に携わってきました。
 

市民の目線で監視カメラ規制立法を考える

■監視カメラの規制のあり方を探る

 本人の同意もなく、自分のコントロールの及ばないところで監視カメラの被写体とされ、無差別に記録されることは、まさに個人の肖像権の侵害に当たると言えます。しかし、一方で、犯罪が多発し、手口が巧妙になるにつれて、C監視カメラは絶対ダメ!Dと叫び、Cプライバシー原理主義Dを主張するだけでは立ちゆかなくなっているのも事実です。ただ、監視カメラの濫設、自由な利用を放置しておいてよいわけはありません。立法府には、真摯な対応が求められています。監視カメラにC鈴をつけD、その設置・利用を私たち国民が常時C監視Dできる透明化のルール・法的システムづくりが急がれています。
 河村たかし議員から話しを持ちかけられて私が作成した民主党「監視カメラ適正化法案」は、行政機関による監視カメラを対象にしています。役所のカメラについては規制をかけるけれども、民間のカメラに関しては役所がシャシャリ出て規制をかけるべきではない、というのが私の考えです。これをセグメント規制方式といいます。
 杉並区では「杉並区監視カメラに関する専門家会議」という審議会をつくって、その答申に基づいて区長が区長提出条例案をだしました。「専門家会議」の委員は、元最高裁長官の三好達さん(会長)、私と都立大教授の前田雅英さん、日弁連の三宅弘さんの4人です。
 監視カメラを付けたからといって犯罪が減るという理論展開は難しいのですが、アンケートを取ると区民の9割ぐらいが「監視カメラ賛成」なんです。監視カメラの有用性を市民感覚として認めざるをえません。しかし、ルールづくりをどうするのかという問題がでてきます。


講演・石村耕治さん

■杉並区の「防犯カメラ利用設置基準」を点検する

(1)立法目的

「第1 目的 防犯カメラの適正な設置及び利用に関し、基本原則及び施策の基本となる事項を定めることにより、防犯カメラの有用性に配慮しつつ、区民等の自由と権利利益を保護することを目的とする」(「答申」、以下引用は同じ)
 私は、「監視カメラの有用性」なんて書かない方がいいという議論をしたんですが、しかし、会議全体の雰囲気は、必要だとなってしまいました。
 「区民等」というのが非常に問題になりました。
「区民等とは、区内在住者及び区内の事業者・通勤者・通学者、さらには杉並区内を単に通過する者をも含む。すなわち、全ての自然人をいい、この基準はすべての人の自由と権利利益を保護することを目的としている」
 
ただそこを通っただけの人でも開示請求ができる仕組みをつくろうと「区民等」としたのです。

(2)定義

「第2 定義 防犯カメラとは、犯罪予防を目的として(犯罪予防を従たる目的とする場合も含む)設置されるカメラで…」
 「監視カメラ」の利用目的は非常に幅広いのですが、これらのうち「防犯カメラ」だけ規制の対象とする、としました。しかし、「防犯カメラ」といっても、なかには雇用契約の遵守状況の監視が基本になっている場合もあるので、「防犯目的を従とする」場合も規制の対象にしようということであります。

(3)基本原則

「第3 基本原則 防犯カメラの設置者及び利用者は、区民等がその容ぼうや姿態をみだりに撮影されない自由を有することにかんがみ、防犯カメラの設置、利用及び画像に関し、適正かつ慎重に取り扱うよう努めるものとする」
 これが非常に重要なんです。この基本原則は、国のカメラ、都道府県のカメラ、市区町村のカメラの全部に適用されます。
 これが味噌なんです。市区町村の条例では、国や都道府県を対象にしちゃいかんという議論があるんですが、基本原則は国とか、警察のカメラを含めてすべて(ただし前の第2の「防犯目的」という規定があるので、Nシステムが該当するかどうかの問題がありますが)この基本原則を守った上で設置しなければならない。
 「区民がその容ぼうや姿態をみだりに撮影されない」というのは最高裁の判決で認められた肖像権ですから、肖像権というものをたんに判例のレベルではなくて、条例という法典化したという部分から見ていきますとこれは大きな進歩だと思います。

(4)防犯カメラ設置利用基準の届出

 一定の要件に該当する場合には、設置利用基準を定めて区長に届けるという届出制の仕組みを設けています。
 もちろんこういう議論をしていましても、この基準に合うならばドンドン監視カメラを付けて良いから、「監視カメラの呼び水法案じゃないか」という議論がありますが、私もそう思っています。ゼロベースでこれが必要か、どうかということを審査する形をつくるべきだと、私ははじめ提案したんですけれども、評価委員会という認識が専門家会議の委員の中では弱くて結局そこまでいかなかったんです。
 
「設置主体」は、「一 杉並区、二 公共機関〔国、東京都の機関(捜査機関を含む)を除く〕、三 商店会、町会等、四 準公共の場所にかかわる設置者又は利用者」。
 
「準公共」というのが問題になるんですが、「準公共」という考え方は売り場面積などに応じて民間の監視カメラについても規制の対象にしていくということです。例えばデパートですとか、ショッピングモールですとか。
 これはいろんな問題があります。売り場面積でやりますと、コンビニとかは外れてしまいます。売り場面積が小さいわけですから。最終的には区が規則で定めます。そこら辺まで僕らが立ち入れません。

(5)防犯カメラ取扱者等の義務

 「第5 防犯カメラ取扱者等の義務」の中の「6 本人への画像の開示、苦情への適切・迅速な対応」
 開示義務というより努力義務となっておりますが、これをあんまり厳しくやりますとコンプライアンス(法令遵守)の負担が大きすぎるという問題になります。

(6)実効確保策

・取扱者等からの報告徴収
・取扱者等への是正・中止の指導または勧告
・事実の公表
 本来官が民に介入する仕組みはできるだけ回避しなければいけないという思想があったものですから、この段階では立ち入り検査とかはいらないという形でいきました。

(7)苦情等の申立て

 「第7 苦情等の申立て」
・区民等による苦情等の申立て
・区長による適切・迅速な処理
・杉並区情報公開・個人情報保護審議会からの意見聴取
 個人情報保護審議会は区の補助機関ですから、その機能を拡充するということになりました。
 私もこの条例案がベストだとは思っていませんし、監視カメラじたいがなくなる社会のために努力するというのは、私もそれは当然だと思います。しかし、私自身もPIJという政策提言団体を主宰しています者として提言した政策を法律なり条例にしなければいけないという責務があります。
 

■田島泰彦さん(上智大学教授)の問題提起

 何の規制もなしにどんどん監視カメラが付けられていくという無法状態にある現状で、今回の杉並の条例は、ある程度法による規制の根拠を与え規律していくという初めての試みです。
@しかし、条例とか、法律による規制というのは、反面からすると法律で認めるということを意味します。
 歌舞伎町にしろ、Nシステムにしろ、他の多くの商店街にしろ、どんな運用実態になっているのか、まったく明らかにされていません。情報開示がなされていない現状で行う議論は非常に表面的な議論になって、それで賛成が多いか、反対が多いかというような議論をしてはいけないんです。
A監視カメラを付けて犯罪が減るなどということは本質的にあり得ません。犯罪には、それ固有の社会的な、あるいは個人的な原因があって起こるわけですから監視カメラをいくら付けても犯罪を減らすということはできません。
B「防犯カメラ」という名前にしてしまったことがそもそも問題です。今付いている各種のカメラというのは「防犯」というだけではなくて、もっとはみ出した用途で使われているものがいっぱいあります。本質的にあのカメラは何のためのカメラなのかということをきちんと議論すべきです。それをやれば今の現状の中では当然認められる資格を欠いているという結論しかでてきません。
Cではどうすればいいかというと、安易に付けさせないというのが一番であって、二番目には、もうすでに付けているカメラについては一回取らせる必要があります。これを全力でやって、少なくとも付ける以上は最低限の前提条件をきちんとクリアーしろとやるのが一番だと思います。
 情報公開、第三者がチェックするという点で、滑稽なのは、杉並区が設置した監視カメラの規制は、杉並区自身がやるわけです。自分が付けて自分で是正勧告をするというのはコントロールでも何でもありません。杉並の条例ではそういう仕組みになっています。
 

■会場からの意見

斎藤貴男さん(ジャーナリスト) 監視カメラの問題を「プライバシー問題」と言ってはいけない。プライバシーというと牧歌的に聞こえるが、日本が戦争に向かっている中で、世の中を見張る側と見張られる側に分けてしまうということだ。そういう認識の下で考えないといけない。「防犯カメラ」というのは監視カメラの目的の一部だけをクローズアップしている言い方であり、それによって95%の人が誤魔化されている。
 民と官というが垣根がないのが現状だ。セブンイレブンのドーム型カメラは、アイワイバンクが設置して、その画像は「綜合警備保障」という民間の警備会社に流れている。この会社は、1970年頃に元内閣調査室長、つまり警察官僚がつくったもので、ほとんど警察に一体化している。そこに画像が流れるというのは、ほとんど警察にいってしまうわけだから、官と民を区別するというのは難しい。

清水雅彦さん(和光大学講師) 監視社会の問題を監視カメラの問題に矮小化しない方がよい。生活安全警察は「安全安心まちづくり」の二本柱として、ハード面の整備として監視カメラの設置、ソフト面として民間人を動員して「地域安全活動」を推進している。

浜島望さん(一矢の会) ここ数年監視カメラが急増しているのは、警察がリードしているからだ。


 


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