東京都は、6月24日から始まった定例都議会に、「東京都安全・安心まちづくり条例案」を提出し、7月初めには審議を始めようとしています。この条例案は、「身体又は財産に危害を及ぼす犯罪の防止」を「都民の責務」と定め、警察の主導する「防犯」施策への協力を都民に義務化するものです。私たちは、「安全・安心」という名称とは裏腹に、息の詰まる監視社会を到来させようとする、この条例案に反対します。
条例案の「基本理念」は、「安全・安心まちづくりは、都及び区市町村並びに都民等の連携及び協力の下に推進されなければならない」と謳っています。この「安全・安心まちづくり」の施策は、@「犯罪防止のための自主的な活動の推進」と、A「犯罪の防止に配慮した環境の整備」の2本柱とされています。
「地域防犯パトロール」などを「自主的な防犯活動」と呼称していますが、「自主的」といっても、警察署長が「推進するための体制を整備する」とされているように、警視庁と警察署が主導する活動となることは明らかです。「防犯は都民の責務」と位置づけて、警察の整えた防犯パトロール隊に都民を組織しようというのです。私たちは、関東大震災の時に、朝鮮人の大虐殺をひきおこした自警団を想起せざるをえません。
警察は「来日不良外国人」による「犯罪の増加」を大写ししていますが、私たちはこれを、石原都知事の「三国人」発言(2000年)とあわせてみなければなりません。「外国人」を敵視した「防犯活動」のお先棒を都民に担がせようとしているのです。そういうことを許すならば、監視・摘発の対象が、無慈悲なリストラの進行によって生活困窮に追い込まれている多くの勤労者にまで拡大され、さらに戦争に反対する市民が、「非国民」呼ばわりされることにもなりかねません。なによりも問題なのは「防犯パトロール隊」に参加した都民が、相互に監視し合い、密告社会をつくる担い手にされていくことです。
また、「犯罪の防止に配慮した環境の整備」として、警察の指導にしたがって都内全域に、監視カメラの網の目を張りめぐらすことが定められています。住宅や共同住宅の建設主、学校・道路・公園の管理者、駐車場の持ち主、金融機関や深夜スーパー・コンビニなどの民間業者に、警察の指導にしたがって監視カメラを設置することが義務づけられています。「犯罪の未然防止」を目的にして監視カメラを設置し、人通りが多い商店街や駅などを、監視カメラによって24時間録画し続けるならば、多くの人々の行動記録が蓄積されることになります。この住民の日常生活にかかわる映像記録は、「防犯」の名目で、頻繁に警察に提供されることになるでしょう。
犯罪が発生していないのに「防犯」の名目で、公共空間を歩く人々を本人の同意を得ることなく撮影し記録すること自体が憲法13条で保障されたプライバシー権・肖像権の侵害であり、ましてや警察への映像記録の提供を許すことはできません。
そして、「安全・安心まちづくり」の施策全般にわたって、警察署長の「指導助言」が条例として明文化され、警察署長(ならびに警察署の生活安全課)の権限を拡大しようとしていることも極めて危険です。
有事法を制定し、日本を「戦争のできる国」に仕立てあげた小泉反動政権のもとで、警察のもとに都民を巻き込んだ監視体制を築こうとするのが「安全・安心まちづくり条例」の目的です。この条例の制定に、私たちは反対です。「東京都安全・安心まちづくり」条例案を廃案にするよう、強く求めるものです。